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CD:小霜和也 Agency:博報堂 Production:ニッテンアルティ
ちょうどPSPの導入時からしばらく、自分はSCEの業務を離れることにした。理由としては、PS3の市場導入に危機を感じていたため、いったん広告の現場を離れ、客観的な立場に身を置き直したかったからだ。その間は電通とPS3の新事業企画などを練っていた。なのでPSPのローンチキャンペーンは自分の仕事ではない。自分が去った頃から、任天堂の社長が変わり、斬新な戦略でPSを圧倒するようになっていく。それまでのゲームソフトはクリエイター発のボトムアップ型で企画されていたが、任天堂はトップダウン型に切り替えたと自分は見ていた。初めてゲームソフト戦略にマーケティングを取り込んだ、とも言えるだろう。かたやPSPはローンチ以降、苦戦が続いていた。任天堂と比べてソフトラインナップについて大きな戦略がなく、内容的にはPS2の移植作品が多く、PSPの特質を活かしたものが少なかった。
2007年から現場に復帰し、SCEとコンサル契約を結ぶにあたり、PSPについては途中参加のカタチでクリエイティブを指揮することとなった。自分の戦略としては、脳トレに代表されるようなDSの「個人プレイ」に対して、PSPは「仲間プレイ」を訴求していくようにした。どんなソフトのCMにも、「対戦」カットをできるだけ組み込むようにした。子供たちは中学生に進む頃、家族より友人の影響が圧倒的に強くなる。そこでDSからPSPにスイッチさせる作戦だ。また、「これがゲームだ」の新スローガンを前面に出し、本流感を訴求することでゲーマーを取り戻そうとした。幸運なことに、新型PSP2000のハードには多くのブレイクスルーがあり、DSのゲームに飽きてきた層に買い換えを促すきっかけとなった。また、モンスターハンター2ndが大ブームとなり、戦略を押し上げてくれるカタチで、PSPの売り上げは急増していった。ちなみにPSP3000記者発表時の「PSPは容赦なく進化する」という社長メッセージは自分がゴーストライトしたものだ。そのことでSCEは好意的なパブリシティを獲得することができたが、メッセージとしてはむしろ新登場CMよりも効果があったのではないかと感じている。
↓ 自分が関わったPSPの主な広告