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CD:小霜和也 Agency:博報堂 Production:ニッテンアルティ
PS3は大いなる期待感と共に市場導入が待ち望まれていた。しかしPS3の市場導入キャンペーンは成功とは言い難かった。 コミュニケーション戦略上の大きな問題としては、PS2までは追い風になっていたパブリシティが、一斉にネガティブ化してしまったことがある。PS2は「DVD映画が観られてこの価格」という「安さ」で売れたプラットフォームであり、そこが「みんなのPS2」のポジションを生み出した根拠であったが、PS3はまったく逆の、限られた人のためのエンタテインメント機として立ち上がらざるをえなかった。PS3の高価格の大きな原因はPS3の頭脳であるCELLにかけた莫大な開発費だが、残念ながらこれを充分に活かしたゲームソフトはまだ存在しない。SCEも含め、当然誰もがPS3はPS2の後継機種であると捉えていたが、そもそもそこにマーケティング上の誤りがあると自分は考えていた。PS2の後継機種はPSPと捉えるのが正しいのであり、PS3は、流れとは別の突然変異と捉えるべきであった。
自分はPS3についてそのビジネスモデルに危機意識を感じていたので、PSP導入の頃からいったんPSの業務を離れ、2年ほど休養を経た後、PS3ローンチにあたって電通と共に新事業プレゼンをした。ビジネス業界を巻き込むカタチで、ゲーム業界以外にPS3の生存領域を作っていくことでPSの未来を切り拓こう、という戦略だが、SCE社内の意思を統一することができず、立ち消えとなってしまった。今でも、ちゃんとそこができていれば、事態はずいぶん違ったはずだと思っている。
PS3ローンチ時の広告表現については自分は関わっていない。久夛良木社長(当時)の強固な意志で、小霜、そして当時のマーケティング本部がやろうとしていた新しい試みとは逆の、PS初期の表現手法をそのまま踏襲するものとなってしまったからだ。この判断で、PS3広告のその後の方向性が決まってしまったわけだが、自分は疑問を感じている。
ローンチキャンペーンの後、この迷走を収拾する役割で小霜はSCEに呼び戻され、コンサル契約をし、2年ほどPS3、PSPの広告クリエイティブ全体を見る立場を担った。自分としては、PS2までの追い風の中でやんちゃをする表現ではなく、向かい風の中でも着実に売る、という広告姿勢に微妙に切り替えるようにした。その後売り上げは堅調に伸びてきたが、国内市場の状況は改善されていない。開発費のさらなる高騰でPS3ソフトはグローバル市場を意識した内容にならざるをえず、またサードパーティの主要ソフトもXBOXとのマルチプラットフォーム化を進めるなどでPS3の優位性がなくなりつつあるからだ。
PS3の将来のために重要なことは、「ライセンシー支援」「独自ソフト」「パブリシティ」の各施策を立て直すことだと思うが、大きな人事刷新でその経験値を積んだスタッフがほぼ不在となっている中、SCEがどのような戦略を取っていくのか注目したい。
↓ 自分が関わったPlayStation3の主な広告