totalbranding tvcm graphic
CD:小霜和也 Agency:博報堂 Production:ニッテンアルティ
松下の3DO失敗を受けて、ソニーのゲーム市場参入も当初は悲観的な見方が大勢を占めていた。しかしPSが幸運だったのは、それがかえって大きなパブリシティを生み出したことだ。ソニーvs.セガの対決構造が我々の言う「CA(SU)AL」モデルの「C」を勝手に作ってくれたわけだ。 もちろん、広告もブランディングに大きく寄与した。SCE宣伝部はプラットフォームホルダーの役割を的確に理解しており、安易にタレントやキャラに頼らない、ゲームファンの取り込み方を考え抜いていた。広告を作る上で我々クリエイティブチームがこだわったのは主に3点。1つは、ユーザーへの「約束」メッセージで、絆作りをすること。まず「全てのゲームはここに集まる」というスローガンで立ち上がり、企業としての進むべき方向を明確にした。じっさいにファイナルファンタジー、ドラゴンクエストなどを自陣営に取り込むことで約束を果たし、「約束と達成」の上昇スパイラルをPSブランドのコア価値とした。その後のプラットフォームコピーもユーザーへの「約束」を意識している。もう1つは、家族など非ゲーマーのプレイシーンをCMに積極的に取り込むこと。中年や主婦など、ゲームに似つかわしくない人物を登場させ、ユーザー層を拡大し、ゲームのイメージを明化することに成功した。PS以降、あらゆるゲーム会社がこの表現手法を模倣したが、2009年現在、その中で最も優秀な生徒は任天堂だと思う。最後に、ブランド人格。企業と言うよりも仲間として話すような、フレンドリーでやんちゃな人格を作り上げた。セガや任天堂のゲーム機はあくまで「モノ」でしかないが、PSはそれ自体を人格や目的意識を持った「キャラクター」と捉えた。
PS発売と同時に、PS専門誌が数誌発刊された。そのような場合、プラットフォームホルダーは支援の意味でもその表2表3を買い切るが、PSはそこで展開する広告を「内輪ネタ」とした。単なる販促効果よりもコアファンとの絆作りに活かしたわけだ。このシリーズは人気を呼んで数年続いた。
↓ 自分が関わったPlayStationの主な広告